2021/10/18

[51回] アンガーマネジメント


「堪忍袋の緒が (プッツンと) 切れる」―ひと昔前、多くは若者たちにみられた「プッツン」現象ですが、今や中年も老人も「キレまくる」ストレスフルな現代社会。なにかとイライラ、ムカムカすることが多く、それを抑え込む忍耐の限界を超え、冷静さを失って切れそうになったことは一度や二度ではないでしょう。人間関係や仕事に対するストレスは、年代に限らず誰もが少なからず感じていることは想像に難くありませんが、そうした無用なストレスを嫌い、職場や仕事に対する若者の意識が変わってきています。求めるのは高い収入ではなく仲間と楽しく働ける環境、そして、時間的な拘束が少ないことだそうです。高度成長の時代を休みなく仕事に打ち込んできた企業戦士の古強者からは「喝!」とダメ出しされそうですが、確かにそんな職場だとストレスは少ないでしょうね。

怒りに対する対処法であるアンガーマネジメントは1970年代に米国で生まれ、当初は主に軽犯罪者の矯正教育や家庭内暴力 (DV) に対して用いられていました。その後次第に子供の情操教育、エグゼクティブの教養、アスリートのメンタルトレーニング、さらには、ハラスメント対策など、今では幅広く活用されるようになってきています。アンガーマネジメントは怒らないようにするということではなく、怒るべきときは怒り、怒らなくてもいいときには怒らない、つまり、理性が怒りの感情に負けないように、振り回されないように、上手に付き合いコントロールする対処法です。
「感情」が厄介でもあるのはどこへでも持っていけることです。とくに怒りやうつ病で見られるようなネガティブな感情のエネルギーは強く周りに伝播しやすいため、一人一人のそうした感情は家庭や学校、職場の雰囲気に大きく影響を及ぼすことになります。ですから、決して自分だけの問題ではないことに留意する必要があるでしょう。


イライラしたとき、増幅して爆発する前に、自分をそうさせたのは何なのかをひとまずは立ち止まって考えてみるのがアンガーマネジメントの第一歩です。どんな人も怒りを感じないということはありませんが、何にイライラや怒りをより強く感じやすくスイッチが入りやすいのかは人それぞれです。前もってその傾向を知っておけば、必要以上に、過剰に反応せずに鎮めることも可能になってきます。

怒りのタイプ診断

1点 全くそう思わない
2点 そう思わない
3点 どちらかというとそう思わない
4点 どちらかというとそう思う
5点 そう思う
6点 全くそう思う

Q1. 世間には尊重すべき規律・規範があり、人はそれに従うべきだ
Q2. ものごとは納得いくまでつきつめたいと思う
Q3. 自分がやっていることは正しいという自信がある
Q4. 人の気持ちを間違って理解していたということがよくある
Q5. 性善説よりも性悪説のほうが正しいと思う
Q6. 言いたいことははっきりと主張すべきだ
Q7. たとえ小さな不正でも見逃されるべきではないと思う
Q8. 好き嫌いがはっきりしている方だ
Q9. 周りの人が自分のことを何と言っているか気になる
Q10.自分で決めたルールを大事にしている
Q11.人の言うことをそのまま素直に聞くのは苦手だ
Q12.後先考えずに行動できるタイプだ

(1)Q1+Q7、(2)Q2+Q8、(3)Q3+Q9、(4)Q4+Q10、(5)Q5+Q11、(6)Q6+Q12
以上(1)~(6)の中で最も高い点数だったのが、あなたのタイプです。


(1)公明正大タイプ
 社会的に正しくないと思うことやマナー違反に対して怒りを感じやすいタイプ
(2)博学多才タイプ
 はっきりしない人やあいまいな事がらに対してイライラし、なんでも白黒をつけないと気が済まないタイプ
(3)威風堂々タイプ
 自分が一番でいたい、中心にいたいと思うタイプで、軽んじられたり大切にされなかったりすると怒りを感じやすい
(4)外柔内剛タイプ
 表向きは穏やかだが、自分のルールから外れるとイライラしやすいタイプ
(5)用心堅固タイプ
 もの事をネガティブな方に考えてしまう傾向があり、周りがたいしたことではないと思っていることでも必要以上に悪く捉えてイライラしてしまうタイプ
(6)天心爛漫タイプ
 後先考えずに行動し、思うように進まなかったり時間がかかったりするとイライラしやすいタイプ

(出典;一般社団法人日本アンガーマネジメント協会)

対処法   

1)6秒間数える
 怒りが湧いたら6秒数える。戦闘モードの交感神経が強い状態になっているため、深呼吸して鎮静モードの副交感神経にスイッチを切り換えながら数えるとより効果的
2)一旦離れる
 イライラし出したり怒りが湧いてきそうになったら、その場やその状況から一旦離れる
3)怒りを点数化する
 これ以上ないと思う最大の怒りを10点、全くない場合を0点とした場合、今のこの怒りは何点くらいなのかを考えてみる。
4)許容の境界線を広げる
 「~するべき」、{~であるべき}は人によって許容境界に違いがあるため、怒りが湧いてきたとき、境界を広げて考えてみる
 また、相手に対する自分勝手な期待のハードルを下げて考えてみる
5)忍耐力を高めておく
 現代人がキレやすくなった主要原因の一つに、気持ちの安定化・鎮静化を担っている唯一の脳内神経伝達物質GABA(gamma-aminobutyric acid)の不足があるため、その生成に必須のビタミンB6、ナイアシン(ビタミン B3)を日々の食事やサプリメントで十分量摂取しておく

本稿の結びに、いつもイライラしがちだった京都東山建仁寺のお坊さんが、あるときから気持ちの落ち着きを得ることができた「気づき」をご紹介します。
・人生の嫌なこと(出来事)は全て学びの種 
・分かってくれて当たり前、察してくれて当たり前は自分勝手