2013/9/23

[9回] 使って貯めよう「貯筋」!


「使わないで貯めよう貯金、使って貯めよう貯筋!」-これはスポーツ科学研究の第一人者で、「貯筋運動の勧め」で知られる福永哲夫鹿屋体育大学学長のお言葉です。お金を貯める「貯金」はちょっと難しいと思う方でも、筋肉を付ける「貯筋」なら、その気になりさえすれば何とかできるのではないでしょうか。筋肉はスポーツ選手やボディービルダーだけが意識するものではありません。筋肉を維持・強化することは、性・年齢を問わずアンチエイジングのためには生涯欠かすことができないことであることを改めて意識していただきたいと思います。

インナーマッスルをつけて姿勢を良く・若々しく!


姿勢の良し悪しで受ける印象は少なからず変わります。20 ~ 40代の働く女性を対象にした「初対面の男性を見た際に好印象を受けるポイントは?」というアンケートによると、1位は肌で2位に姿勢がランクインしています。髪やお腹まわりをチェックポイントと思っている男性が多いと思いますが、「肌」はうなずけるとしても「姿勢」は意外なのではないでしょうか。肌や髪、お腹まわりがいくらポイントが高くても、姿勢が良くなければ台無しになってしまいかねませんね。

姿勢は外見の評価の重要な要素ですので、若々しく美しい姿勢をつくる筋肉、とくに体幹 (頭と手足を除いた胴体部分) のインナーマッスルについても鍛えたいものです。代表的なインナーマッスルである脊柱起立筋は、背骨を支え直立姿勢を保持する筋肉であり、背中を伸ばしたり、そらしたりする運動 (たとえば、うつぶせの状態で「行かないでー!」と、顔を挙げて、去りゆく人に手を伸ばす懇願のポーズなど) で鍛えることができます。

また、腰を安定させる腸腰筋は、股関節を強く曲げるスクワットや、仰向けの状態で両足を伸ばして挙げるレッグレイズなどが効果的です。お腹をすっきりさせるのは腹筋というイメージですが、とくに下腹部は腸腰筋のトレーニングなくしてはうまくいかないことを知っておいていただきたいと思います。腸腰筋が鍛えられると姿勢が良くなり、下腹部がへこむばかりでなく、体脂肪が減ったり、肩こりや冷え性が軽快することもわかっています。

足の筋肉は元気の条件

筋肉は中年以降になると、普通の生活をしていても1年で1%程度衰えます。太ももの前面の筋肉 (大腿四頭筋) を筆頭に、腹筋 (腹直筋)、腕の力こぶの裏側の筋肉 (上腕三頭筋) はとくに衰えやすいことから、これらの筋肉の衰えを江戸時代の大名の行事に例えて「三筋後退」と呼んでいます。老化は足からと言われるように、手よりも足の筋力の衰えが著しいため、歩くときに足が思ったほど挙がらずにつまずいて転び、大腿骨を折って寝たきりになってしまう高齢者は少なくありません。筋肉はいくつになってもトレーニングで付けることができます (たとえ100歳を超えても!)。トシをとっても、いまさらと思わずに、とくに足の筋肉を付けることは、元気でいられる必須条件といっても過言ではないでしょう。

筋肉の働き

筋肉の働きについて問われた場合、みなさんは何と答えるでしょうか。「動作や運動の際に働くもの」といった答えしか思い浮かばない方も少なくないと思いますので、本コラムの終わりにまとめてお伝えいたします。

[筋肉の働き]
1. 動作・運動
2. 体熱 (体温) の生産 体熱の主な生産工場。その際に1日のエネルギー (カロリー) のおよそ40%が消費されるので、ダイエットには筋肉を付けること (少なくても落とさないこと) は欠かせない。
3. 循環系の補助 心臓の収縮 (ポンプの働き) で送り出される動脈血に対し、心臓に戻る静脈血やリンパは筋肉の収縮がポンプの働きをしている。「ふくらはぎ」は第2の心臓と呼ばれている。この筋肉が少ないと、むくみ、冷えにつながっていく。
4. 外部衝撃からの防御 皮下脂肪と筋肉が衝撃を緩和
5. 生理活性物質の生産 現在では筋肉もホルモン生産臓器であると認識されるようになってきている(IL-6、IGF-1、VEGFなど)。
6. エネルギー源の貯蔵 グリコーゲン、分枝鎖アミノ酸 (BCAA)

こんなに様々な働きのある筋肉。さあ、みなさんも今日から「貯筋」をはじめましょう!