2013/10/23

[10回] シニア期を若々しく健やかに生きるためのポイント

①食事

カロリーを控えめにすること (CR : calorie restriction) は、健康的な食生活の要であることは医学的に異論のないところですが、それが必要なのは中年期からシニア期の入り口 (定年のころ) までであり、生涯を通じてということではありません。なぜカロリー控えめなのかというと、若いころから中年期のカロリー過多や食生活の乱れのつけが、シニア期に病気 (例えば、メタボは将来の心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患をもたらす) として反映されるのを回避するためであり、さらには老化についても余計に進まないための手助けとなるからです。

一方、シニア期では、カロリーよりも、内容やバランスにより留意することが肝要です。とくにこの世代の多くが、意識的あるいは好みの変化のために不足しがちなタンパク質と脂質を必要十分量摂ることが求められます。シニア期の病気の発症は、老化のために体力が低下し弱体化した状態が基盤となっているため、シニア期においては病気の発症を回避するために、老化にブレーキをかけ病気に負けないための「身体づくり」と「体力づくり」に重点が置かれるべきなのです。

「年をとると子供に帰る」という言葉がありますが、食事 (栄養) の摂り方についてもそうなるべきです。つまり、シニア期では、将来ではなく、今病気を発症させないための「老化」対策がより大切ということになります。

「バランス」を意識した食事内容

私たちの身体は主にタンパク質と脂質で作られていますので、生涯を通じてこれらの栄養素の確保をおろそかにはできません。遺伝子的には加齢に伴いタンパク質は分解される方向 (タンパク異化) に向かっていくにもかかわらず、タンパク質が豊富な肉の摂取量は減っていく傾向にあります。良質のタンパク質の宝庫である卵についても、コレステロールを気にして意識的に制限している方が少なくありません。しかし、コレステロールのおよそ80%は肝臓で合成されるため、コレステロールの多い食品を摂ってもその影響は少ないとのことで、リスクがある方は別として、そうでない方は厳格な制限の必要はないとの意見が近年強くなってきています。 脂っこいものについても敬遠しがちになっていきます。そうなると、脂質 (脂・油) 不足による様々な弊害が強まっていくことになります (細胞膜の劣化により、情報や栄養素のやり取りや病原体の侵入阻止力の低下、脳の活性度の低下など)。

つまり、シニア期の食事は、肥満の方は別として、カロリーをやみくもに制限せずにタンパク質と脂質を必要十分量バランスよく摂取し、その上で、病気や老化に密接に関わっている酸化 (活性酸素による身体のさびつき) と糖化 (余計な糖分による身体のこげつき) 対策に効果的な発酵食品や野菜、ハーブ、スパイス類などをより積極的に摂ることが望ましいでしょう。

②社会性

社会とのつながりを、できる限り多く・強く保っていくことが望まれます。そのためには、夢や目標 (人に言えないささやかなものでもよい) 、そして、なにかしらの役割や責任を持ち続けることが大切です。それは気力・活力や五感の衰えを防ぐことにもつながり、健康に資することになります。また、ときめきやオシャレ心も、いくつになっても忘れないようにしたいものです。

「関心・感動・感謝 (3カン王) : 世界的なおもちゃコレクターである北原照久氏の言葉」の気持ちを忘れず、「病は気から、老化も気から、いつまでも若々しく、元気でいるぞ!」という心の持ちようが、とくにシニア期では何よりも大切でしょう。

③活動性

自身の身体状況や生活環境に合わせて、無理のない範囲で活動性を維持・高めることに留意したいものです。ノルマとしての運動よりも、少なからず楽しみを伴い、日常生活のなかに無理なく溶け込めるものが望ましいですね。食事や社会性が良ければ、おのずと活動性も高まっていきます。食事、社会性、活動性は「三位一体」と考え、どれもおろそかにしないようにしていくことがシニア期の方が若々しく健やかに生きるポイントと言えるでしょう。たまにはご家族・ご友人とルスツリゾートで「三位一体」の楽しい休暇を過ごすことも、立派なアンチエイジング活動です。楽しく素敵な時間を重ねていきましょう。