2014/7/18

[11回] 炭水化物抜きダイエットとトータルダイエット


炭水化物を極力摂取しないダイエット。はたして効果のほどは? リスクは? 今回は、関心度の高いテーマ「ダイエット」のなかから、昨今注目度の高い「炭水化物抜きダイエット」を中心にダイエットについて考えてみたいと思います。

Q1. 炭水化物抜きダイエットは有効なダイエット法ですか?

YES。「効果」という意味では、最も有効なダイエット法の1つと言えるでしょう。

Q2. その理由は?リスクは?

糖質制限食 (炭水化物制限食) 、脂質制限食、地中海食を比較した研究では、糖質制限食が最も早く、強くダイエット効果がみられたとする世界的に有名な大規模研究があります (2008年 : DIRECT試験)。つまり、医学的に検証されているということであり、我が国においても実施者のダイエット効果は高い印象があります。しかしながら、次に示すリスク ( デメリット)が気になります。

・三大栄養素のうちの1つを過度に制限することにどこまで人間の体が適応できるのか心配 (栄養バランスが大きく偏ることの悪影響は?) とくに、長期的にみて何らかの悪影響の出現が危惧される (長期にわたる糖質制限は死亡率を高める可能性があるとする27万人の研究報告が昨年報告されている)。
・糖質を過度に制限すると、脳は血糖値を下げるインスリンの効果を弱め糖分を確保しようとする。その結果インスリンが効きにくい状態 (インスリン抵抗性) になり糖分の処理がうまくいかなくなって糖尿病へと進展していくともに、脂質異常症、高血圧も合併しやすくなる。つまり「メタボ」のリスクが高まっていく。
・脂質とタンパク質の摂取比率が確実に過剰に高くなってしまうための悪影響が危惧される。
・血液中の造血幹細胞 (血液を作る細胞) が減るとする研究報告がある。
・リバウンドしやすく、その幅も大きい (DIRECT研究では、1年後には脂質制限食よりは効果が維持されるが、地中海食と同レベルになる)。

Q3. そのほかの効果的なダイエット法は?

ダイエット法それぞれに、それなりの効果 (メリット) とリスク (デメリット) がありますが、その多くが「~ダイエット」という特定の名が付く単独/単品ダイエットです。単独/単品部分が私たちの体に過剰に作用することになりますが、そうすると、メリットの背後にあるかもしれないリスク(デメリット)についても思い切り背負い込むことになります。ビジネスの世界でよく言われる「リスクヘッジ : リスクの分散」は、健康の領域においても最大限に留意すべきなのではないでしょうか。

「ダイエットとは、体重を落とすということではなく、体脂肪を落とすこと」です。ということは、体脂肪の減少以上に筋肉が付けば体重は逆に増えることになりますが、それもダイエットなのです。食事の工夫だけにとどまらず、筋肉量を減らさないような運動や睡眠の確保、ストレスの回避・解消など、リスクヘッジに留意しながら行う「総合的なダイエット」が、結局は最も効果的で、健康的で、リスクの少ない、続きする方法と言えるでしょう。

総合的ダイエット (トータルダイエット) 10か条

1. 辛すぎない程度に摂取カロリーを控えめにして使い切る。
2. 食事は内容や食べ方重視。タンパク質は十分 (赤身肉、魚、卵、豆など毎日十分に)。炭水化物は控えめ。アブラを毛嫌いせず適度の脂 (肉や乳製品) と油 (オリーブオイルや魚の油など)。野菜はたっぷり。食べる順番は野菜から (海藻やキノコでもOK) 。朝食は抜かない。間食は控える。数日単位で帳尻を合わすといった気楽さで実施する。
3. 十分量のビタミンとミネラルで代謝アップ (質の良いサプリも考慮)。
4. 筋肉を付けて太りにくいからだを作る (筋肉はカロリーの大食漢!)。
5. 有酸素運動で体脂肪をガンガン燃やす。食べ終わって5分後にはからだを動かし、血糖をエネルギー源としてできるだけ使ってしまう (使われなかった血糖は中性脂肪に変換され体脂肪となる!)
6. 可能な限り加工食品を回避し、余計なものをからだに入れない。
7. からだを温めて代謝を高める (冷たいものの摂り過ぎに注意) 。
8. よく寝て成長ホルモン分泌を高める (筋肉作りや脂肪の分解を促進) 。
9. 自然のリズムに沿った規則正しい生活で自律神経を整える
10. ストレスの回避・解消で余計な脂肪貯めこみを防ぐ。