2015/1/14

[14回] あなたのその「疲れ」は病気?―副腎疲労症候群と慢性疲労症候群―


からだの十分な休養によっても回復しない「疲れ」。あなたはいかがでしょうか?本稿では、こうした慢性的な疲れの原因として現代人に増えてきており、医学的にも社会的にも注目されつつある「副腎疲労症候群」と「慢性疲労症候群」という病気についてご紹介します。

副腎疲労症候群 (Adrenal Fatigue Syndrome : AFS)


副腎とは腎臓の上に帽子のように乗っかっている小さな臓器で、ステロイドホルモンなどの重要なホルモンが作られています。デリケートな臓器であり、不規則な食生活による栄養不足やアンバランスを背景にして、そこにストレスが毎日のように加わると次第に疲弊し、ホルモン分泌量が減少していきます。

血圧を上げたり血糖値を高めてエネルギー供給量を増やすなど、ストレスに対してからだの諸機能を対応させることに係るコルチゾールの減少がとくに問題です (慢性的なストレスにより泌量が増えるためストレスホルモンと呼ばれますが、実際はストレスからからだを守るために働いている抗ストレスホルモンです) 。また、万能ホルモンあるいはマザーホルモンと言われ抗ストレス作用のあるDHEA (デヒドロエピアンドロステロン) の分泌も低下し、ますますストレスに抵抗できなくなっていきます。

症状としては、疲れやすい、十分な休養でも疲れがとれない、身体がだるい・重い、気分が落ち込む、やる気が出ない、物忘れ、集中できない、イライラする、眠れない、朝起きられない、風邪をひきやすい / 治りにくい、アレルギーや花粉症が強い、生理不順、性欲の低下など様々です。このような自覚症状以外にも、血圧が低くなって起立性低血圧を起こしたり、低血糖のため甘いものを欲するようになることもあります。

コルチゾールの分泌は日内変動があるため (朝8時頃をピークに深夜までに徐々に減少していく)、それを調べることが大切です。ワンポイントの採血でのコルチゾールやDHEA濃度の測定も参考になりますが、もっとも確実なのは唾液中のコルチゾール日内変動の測定です。この検査は半日がかりですので、自宅に検査キットを持ち帰って実施することになります。縮瞳テストも自己診断法として参考になります。懐中電灯を目に当てると黒目が小さくなります (縮瞳) 。中等度以上に副腎機能が低下していると目の筋肉の収縮力が弱くなっているため2分以内に元に戻ってしまう (散瞳) ことが多いようです。

副腎疲労症候群の治療

治療については、ストレスの回避・解消と日々の食生活の適正化が不可欠であり、ホルモンの補充 (DHEA) も効果的ですが、以下に示す栄養療法がより大切です。

1. 糖質制限糖質の摂取により血糖値が上がると、膵臓からインスリンが分泌され血糖値が下がります。その反動で今度は副腎からコルチゾールが分泌され血糖値を戻そうとします。つまり、糖質摂取は膵臓だけではなく副腎にも負担をかけることになるため、その制限により負担を軽減する必要があります。
2. ビタミンC摂取ビタミンCはからだ中で副腎に最も多く存在しホルモンの生産に関与しています。健康食品からの十分量の摂取 (1日1000~3000mg) が考慮されます。
3. ビタミンB群摂取エネルギー生成や代謝など身体の諸機能に密接に関与しているビタミンB群についても、必要十分量の確保のためビタミンC同様に健康食品が考慮されます。
4. ミネラル摂取代謝などのからだの様々な働きに密接に関与している亜鉛、マグネシウム、鉄などのミネラル分の補充も効果的です。
5. カフェイン制限活動モードの交感神経を刺激するため、摂り過ぎは身体の休息にとって好ましくありません。

慢性疲労症候群 (Chronic Fatigue Syndrome : CFS)


治療については、栄養の適正化によりからだの調子を整えながら各種の薬物療法を加えていきます。

1. 高用量ビタミンC・ビタミンB12、CoQ10、クエン酸、抗疲労物質 (イミダペプチドなど)、抗酸化物質
2. 漢方薬 (補中益気湯、六君子湯、十全大補湯など)
3. 抗うつ薬、抗不安薬、眠剤
4. 抗ウイルス剤
5. 免疫調整剤
6. その他 (ホルモン補充、鍼灸など)

どちらの病気も心身のストレスが引き金になっています。過剰なストレスはアンチ・アンチエイジングですので、ときには自然が豊富なルスツリゾートの環境に身を置いて、ゆったりとした時間の流れの中で心と体を癒してみてはいかがでしょうか。

東京国際クリニックでは、これらの病気の診断、治療を行っています。心当たりのある方は、ぜひご相談ください。