2019/9/10
[39回] 心理効果活用法
米国では、block (石)、scissors (はさみ)、paper (紙)、インドネシアでは、象、人、蟻―何の組み合わせでしょう?これはわが国ではグー、チョキ、パーの「じゃんけん」の三すくみを表すものです。インドネシアはお国柄がよく出ており、象は拳を握るグー、人は人差し指を、蟻は小指を一本立てます。米国は日本と全く同じですね。その起源は、酒席の座興などで行われていた指の変化により勝負する中国の拇拳 (ゆびけん) が元禄時代に伝わり、西日本を中心に古くからあった拳遊びと結びついて明治の初めごろに現在のようになりました。今や様々な形で世界中に広がり親しまれています。
何かを決める際、短時間で簡単に誰でもできる決着法としてよく使われるじゃんけんは、一見運の良し悪しにかかっているように思いがちです。しかし、実は統計学と心理学を巧みに使うと勝率がグンと上がるのです。たかがじゃんけんとはいえ、これは統計学に裏打ちされた科学的な心理戦なのです。
本コラムでは、やるからには勝ちたいじゃんけんの勝率アップの方法を前置きとして、誰もがもつ心理的な効果を利用してアンチエイジングライフを活性化させる方法をいくつかご紹介します。
「じゃんけん」の勝率アップ法
・「じゃんけんポン」の掛け声で始まる場合
パー (グー50% ⇒ パー30% ⇒ チョキ20% の順で相手が出す確率が高いため)
・「最初はグー」の掛け声で始まる場合
チョキ (最初がグーの場合、相手はグー以外の手を出す確率が高いため)
・グーやパーであいこになったとき
直前に出した手に負ける手 (心理的に直前の手とは違う手を出したくなる傾向にあるため)
・チョキであいこになったとき
チョキ (チョキを出した後はグーの拳を作る動作より、チョキかパーを作りやすいため)
・迷ったとき
パー (グー50% ⇒ パー30% ⇒ チョキ20% の順で相手が出す確率が高いため)
・再戦のとき (例えば3回勝負の2回目や3回目)
相手の前回の勝利手に勝つ手を出す (心理的に同じ手を出しやすいため)
・相手が疑い深い人の場合は、出す手を宣言してそのまま出す
・相手が緊張しやすい人の場合は、身体が固くなりグーを出しやすいので、こちらはパーを出す
・考えさせずに速く行うと上記のようになりやすい (そのためにも、この勝率アップ法を素早く使いこなせるようにしておく必要があります)
・複数で対戦の場合は、確率的にみてパーを出すと勝ちやすい
Labeling effect (ラベリング効果)
「あなたは、いつだって決断できないんだね」といったように、言葉や態度で相手に対してあたかもラベルを張るように (この場合は「決断できない人」) 決めつけると、その人は貼られたラベルのようになっていくというものです。これを繰り返したり、貼る人が多くなるほど脳に強くインプットされ、貼られたラベルにふさわしい行動をとるようになっていきます。
このラベリング効果は、他者を教育したり、自信をつけさせたりするときに使われるべきであり (例えば、「ツメは甘いけど大局観あるね」、「センスはさすがだね」など)、冒頭のようなマイナスイメージのラベルを貼るのは慎みたいものです。また、ありがちなことですが、ポジティブなラベルを貼って褒めておけば勘違いしてやってくれるとか、波風立たずにすむといった気持ちでやるのも好ましくはないでしょう。
このコラムで強調したいことは、あくまでもより良い方向に導く目的で使うラベリングは、他者ばかりでなく自分を変えることにも用いることができるということです。下記に示すようなポジティブ心理学で扱う「自分の強みとしてのキャラクター」を見つけ、自分に対してラベルを貼り、常に意識して日常の生活に落とし込んでいくのです。そうしていくうちに、他者も同じラベルを貼ってくれるようになり、自分の個性として確立されていくでしょう。
Labeling effect (ラベリング効果) -2
知恵・知識 : Wisdom & Knowledge
1. 創造性
2. 好奇心
3. 向学心
4. 知的柔軟性
5. 大局観
勇気 : Courage
6. 誠実さ
7. 勇気
8. 忍耐力
9. 熱意
人間性 : Humanity
10. 親切心
11. 愛情
12. 社会的知性
正義 : Justice
13. 公平さ
14. リーダーシップ
15. チームワーク
節度 : Temperance
16. 寛容さ
17. 謙虚さ
18. 慎重さ
19. 自制心
超越性 : Transcendence
20. 審美眼
21. 感謝
22. 希望
23. ユーモア
24. スピリチュアリティ
Halo effect (ハロ―効果)
心理的認知バイアスの一つ。聖像などの背後にあるhalo (後光や光輪) は、見る者の目を引きその姿形を神々しく高める効果があるように、何かを評価するとき、目立つ特徴に引きずられて全体を評価してしまうというものです。人物の評価においては、劣っていたり、良くないところが目立ち過ぎてしまうと、下手をするとその人は全否定されてしまうことになりかねません。
反対に、秀でたものや良い特徴があると、それ以外の部分は実際以上に低く評価されてしまうというネガティブな効果もあります。やりがちなことではありますが、他人ばかりでなく、自分に対しても目立つ一点だけを見過ぎて安易に全体像として捉えないよう注意する必要があるでしょう。たとえ他人からみて秀でたものがなくても、前述した自分自身へのラベリング効果を利用して、良い特徴を形にしていく積極的な姿勢でありたいものです。
Color bath effect (カラーバス効果)
あることを意識すると、これまではとくに意識していなかったそれに関する情報が見えてきたり、集まってくるという現象。ある色を意識すると、あたかも色のシャワーを浴びるようにその色が無意識に目についてくるようになるというものです。例えば、赤い服に興味があり欲しいと思っていると、赤色に目がいくようになり、いよいよ買えそうになるとそれが顕著になっていったりします。
これは、色やモノばかりでなく、音や言葉や感覚的なものまで、どんな対象でも起こりうる現象です。つまり、意識は無意識に働きかけて共に関心を持っている情報を集めようとするので、常にそれを明確にしておくと効果が高まります。意識、無意識から発せられる脳からの波動は、周囲に情報捕捉のための網を張ってくれるとともに、そうした波動に同調する人にも繋がるなど、付加的効果も発揮されていくことになるでしょう。
じゃんけんの「最初はグー」は、元ドリフターズの志村けんが番組の中で掛け声として使ったのが始まりだそうです。また、インドネシアのじゃんけんは、象 (グー) は人 (人差し指) を踏むので勝ち、蟻 (小指) は小さすぎて踏めないので負けなのだそうです。残念ながら、これは私たち日本人にはなじまないようです。感覚的にピンと来ないし、小指を一本立てたり、拳を固くグーと握るので、もし声掛けなしでやると周りの人には別の意味にとられてしまうかも?!