2020/1/27

[41回] 光の心理的・生理的効果


「もっと光を!」は劇作家、詩人として著名なゲーテの言葉として知られていますが、この言葉に示されるように、彼は自然科学領域の研究者でもあり色彩に関する本を著しています。また、光の物理学的研究から境界のない虹の色を外側から赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色としたのは、万有引力の法則を提唱したニュートンと言われています。(多くの国では7色ですが、米国では藍色を除いた6色など、国によって違いがあります)。

光研究の歴史は古く、紀元前5 – 3世紀の古代ギリシャにおいてアリストテレスらにより反射や散乱、屈折などの基礎が形作られました。それは中世に生きたニュートンらに大きな影響を及ぼし、さらにその後の研究によって光のさまざまな働きが知られるようになりました。サーカディアンリズムと呼ばれる一日の生体リズムは、太陽の光(色)の移り変わりが大きく影響しています。つまり、日の出の赤から始まり、虹の色の順番通りに加わってくる色が交じり合うお昼をピークに、今度は逆の経過で日の入りの赤となるまでに浴びる7色の光は、知らず知らずのうちに私たちの心とからだの健康に寄与しているのです。

心理的効果

色のイメージ
・赤 : 情熱、興奮、怒り、歓喜
・黄 : 明朗、快活
・緑 : 安心、安全、若さ
・青 : 鎮静、冷静、知性、信頼
・白 : 清潔、清廉、刷新
・黒 : 重厚、絶対、豪華
・ピンク : 愛らしさ、優しさ

光の中間色である緑は、古代エジプトでは太陽を表す色として崇拝されていました。最も刺激の少ない色であり、色彩心理としては安定・バランスです。赤はエネルギー・パワーであり、緑とは正反対の刺激の強い色です。ケネディ大統領に始まり、ブッシュ、オバマ、トランプ大統領など、勝負所ではいつも赤色のネクタイを締めていますね。世界中の人に最も好まれる青は抑制・落ち着きであり、青色 (ネイビー) のスーツはビジネスマンに愛用されています。黄色はアピールの心理です。若い女性の黄色の声援は、相手に対する自己アピールなのでしょうか。

心理的効果を示すエピソード
・ロンドンのテムズ川に架かっているBrackfriars Bridgeは黒ずくめの鉄製の橋であったが、自殺する人が多かったことから緑色に模様替えしたところ、その数は前年の1/3に減少した。
・米国の刑務所の独房の色をピンクにしたところ、暴力行為が減った。
・レストランで働くウエイトレスに、赤、青、黄、緑、白、黒の6色のTシャツを日替わりで着てもらったところ、男性からのチップは赤のときが最も多かった。

生理的効果 (健康効果)

光を利用する光線療法の歴史は古く、1903年に紫外線を用いた皮膚結核の治療がノーベル賞を受賞したことで注目されるようになりました。1962年に開発された発光ダイオード (LED) は当初は赤色波長のみでしたが、その後緑と青が開発され三原色が揃いました。中村ら日本人研究者による青色発光ダイオードの開発は2014年のノーベル賞に輝いています。
こうした科学技術の進歩により、さまざまな疾患に対し、波長の違う色それぞれの光化学反応特性を利用する治療法の研究開発がすすめられています。

色の光化学反応特性
・UV (紫外線): 免疫システム強化 / 全身の体調の改善 / 幹細胞活性化
・青 : 血管系の改善 / テロメラーゼ活性化 (アンチエイジング効果)/ 抗炎症作用
・緑 : エネルギー産生増加 / 強い抗炎症作用
・黄 : デトックス / メンタルの安定化
・赤 : 抗炎症作用 / 創傷治癒作用 / エネルギー産生増加 / 免疫システムの調整
・IR (赤外線): 強い免疫活性化 / エネルギー産生増加

適応疾患
悪性腫瘍、高血圧、脂質異常症、糖尿病、アレルギー疾患、湿疹、感染症、慢性疼痛、慢性疲労、慢性肝疾患、慢性腎疾患、神経障害、外傷、頭痛、めまい、耳鳴り、リウマチ、黄斑変性症、うつ病などメンタルの変調、繊維筋痛症、スポーツパフォーマンス向上、アンチエイジング など

こうしたさまざまな疾患や体調不良に対し、数回にわたり2 – 6種類の色のレーザー光線を順次血管内に照射します。
また、がんに対しての光免疫療法 (近赤外線免疫療法) は世界的に最も注目されている治療法であり、現在国際的な臨床試験が進行中です。光線療法はドイツを中心とするEU で主に実施されており、わが国では一部の自由診療医療施設で受けることができます。
※がんについては、東京のルネスクリニック日本橋、大阪のりんくうメディカルクリニックなどの数施設のみです。