2020/10/2

[45回] 免疫力アップ8策


2019年末に始まり、瞬く間に全世界を席巻していった新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 。1918年のスペインかぜ以来、5回目のパンデミックの終息を目指し、治療薬やワクチンの開発が世界中で進められています。一日も早い実用化が待たれますが、感染したとしても症状がみられない不顕性感染にとどまるか、あるいは、発症しても重症化を防ぐのは自身の免疫力にかかっているということを今一度再認識する必要があります。
本稿では、ウイルスや細菌、そして癌に対抗する免疫力を強くするための日々の対策を提案します。


(1) 腸内環境を整える
慢性的な便秘やお腹の張り、何かを食べるとすぐ便意をもよおすといった人は、腸内フローラのバランスが乱れ、腸の粘膜が傷ついている可能性があります。また、腸内には全身のおよそ60%の免疫細胞が待機しており、その力も低下していることが予想されます。このような状態が続けば、善玉腸内細菌による栄養素の合成低下や食事からの栄養素が十分に吸収されなくなってしまうばかりか、食品中や悪玉菌が作り出す有害物質や病原微生物の体内への侵入を許してしまうことになります。さらには、脳と腸は密接な関係があることから (腸脳相関 / 腸は第2の脳) 、メンタルの変調を招くことにもなりかねません。
食物繊維 (野菜、海藻類) やプレバイオティクス (オリゴ糖を多く含む食材;豆類、ネギ類、ブロッコリーなど) 、プロバイオティクス (乳酸菌やビフィズス菌を含む食材;ヨーグルト、発酵食品など) は、便秘の予防・解消や腸内フローラを整える効果が期待できます。
食べもののタンパク質は自己以外の異種タンパクであるため、腸粘膜にダメージを与え、体内で様々な悪影響を及ぼす可能性があります。とくに小麦 (グルテン) と乳製品 (カゼイン) については、自覚していない人を含めるとからだに合っていないことはめずらしいことではないのです。
パンや麺類、トンカツなどの衣が付いた料理や乳製品を摂るとお腹の具合が悪くなる人は言うに及ばず、お腹の症状がなくても毎日食べていて他に何らかの症状がある人は、小麦、乳製品がからだに合っていない可能性があります。これらの食品を1-2週間一切摂るのを止めてみて症状が軽減するか否をみることは、有力な判断材料になるでしょう。
こうした食材以外にも食品添加物やカフェイン、アルコール、薬剤、有害ミネラル、そして、ストレスも腸内環境の悪化の原因になりますので注意が必要です。

(2) 睡眠の確保
睡眠は脳とからだの休息と、記憶の固定・消去、明日へのエネルギーの蓄積という大切な働きがあります。また、からだの成長や修復も主に夜間睡眠中に活発になり、その過程の中で免疫力も増強されることになります。
※肝炎ワクチンを接種した後の抗体産生量を調べたところ、接種当日きちんと寝た人は徹夜した人に比べおよそ2倍多かった。


(3) 免疫力を高める栄養成分の摂取
ビタミンD (青魚、サーモン) 、C (イチゴ、レモン) 、亜鉛 (牡蠣、チーズ、納豆) 、セレン (マグロ赤身、カツオ、玄米) 、βグルカン (キノコ) 、フコイダン (メカブ、モズク、コンブ) 、リグナン (ゴマ) など。
※COVID-19感染者でビタミンDが正常 (血中濃度 > 30ng / ml) であった人の死亡率は4.1%であったのに対し、不十分 (21 – 29) では87.8%、欠乏 ( < 21) では98.9%であった。

(4) 笑い
ほとんど笑わない人は毎日のように笑う人に比べ、生活習慣病のリスクが高いことが知られています。
※演芸場で3時間笑って過ごしてもらったところ、免疫部隊の主力細胞の一つであるナチュラルキラー細胞 (NK細胞) 活性がアップした。

(5) 化粧、オシャレ
お化粧やオシャレをすることによる健康効果が知られており、コスメティックセラピーとして治療に用いられています。
※化粧前に比べて化粧後には免疫グロブリンがアップした。

(6) 森林浴
植物には免疫を活性化する作用があることが分かっています。
※自然林の中にある保養施設で2泊3日過ごしたところ、翌日NK細胞活性が43%アップし、1週間後も維持された。一方、一般の旅行では変わりはなかった。

(7) 温浴
温浴によるリラックス効果や温泉成分効果で免疫力が高まります。

(8) 日光浴
紫外線による殺菌効果や体内でのビタミンD合成促進により免疫力が増強されます。