2020/12/15

[46回] 血液型


犯行現場に残された犯人の血液型はA型。警察が犯人間違いなしとしてようやく検挙に至った被疑者の血液型はB型であり、捜査は振り出しにーしかし、科捜研の女はその人物が犯人であることを見破り事件は解決したのであった。メデタシ、メデタシ。
どんなからくりなのか皆さんはお分かりですか。ポイントは血液型は変わりうるかということですが、ある病気の治療によりそれはよく起こることであり、結果として生死の境を彷徨っていた人が健康を取り戻しているのです。血液は骨髄で造られることを考えると答えは出てきます。そう、白血病などで行われる骨髄移植では、受けた人の血液はドナーの造血幹細胞から造り出される血液になるため、双方の血液型が違う場合こうした一見おかしなことが起こってしまうのです。ですから、骨髄移植や遺伝子解析が普及する前でない限りこのようなストーリーの犯罪ドラマは成立せず、当然のことながら科捜研の方の出番はないということになります。
また、血液型だけではなく血液細胞の遺伝子DNAも変わってしまいます。それはちょっと怖いですね。そうなると、キャラクターも変わるのでしょうか?? ちなみに、骨髄移植は移植後の拒絶反応を考慮し、一般的な赤血球の型 (ABO型) は必ずしも同じでなくてもよく、拒絶反応に係る白血球の型 (HLA型) が合致した人を適合ドナーとしています。


血液型には4つの型があり、日本人では多い順にA、O、B、AB型で、およそ40%、30%、20%、10%です。こうした血液型による性格の違いについてはよく話題に上りますが、科学的な根拠はないと言われています。一方、近年の血液型と病気の関連についての研究により、血液型の違いによる病気のなりやすさがわかってきました。

 

他の型に比べなりやすい病気(相対比較)

A型 :胃がん、唾液腺がん、感染症
B型 :膵臓がん、口腔がん、糖尿病
AB型:脳卒中、認知症、血栓症、冠動脈疾患、感染症
O型 :胃・十二指腸潰瘍

また、免疫力が最も強いのはO型、最も弱いのはAB型であることも知られています。そのためか、新型コロナウイルスの感染はO型が最も低く重症化も少ないとの調査報告はうなずけますね。A型はB型が持つB抗原に対する抗体、B型はA型が持つA抗原に対する抗体を作ります。一方AB型はどちらも作らず、O型はどちらも常に作り続けていることから、AB型は4つの型の中で免疫系の活性が最も低く、O型は最も高いということのようです。
これらの研究から病気に強いのはO型と言えそうです。しかし、大きなけがをしたO型の人は、他の型の人に比べ死亡率がおよそ3倍高いとする救急医学の論文がありますし、そもそも生活習慣の方がはるかに病気のリスクを左右することからO型の人も手放しでは喜べませんね。
白血球の型(HLA型)と病気の関連の研究も進んでおり、今後さらに赤血球の型(ABO型)と病気の研究が進めば、一人ひとりの患者さんに対してオーダーメイドの治療ができるようになるかもしれません。

科学的・医学的な根拠はないとされる性格との関連性ですが、病気のなりやすさや免疫力の違いがあるならば、血液型で性格が一定方向に向かう傾向があっても不思議ではないのではないか、という意見があります。AB型は免疫力が弱いくいろいろな病気になりやすいため、慎重、神経質、内向的になり、逆にO型は開放的になっていくのでしょうか?


人類はもともとO型のみであり、AやB、AB型の人はいませんでした。それが今や4つの型がみられるようになったのは腸内細菌が関係しています。生きるためには食べる必要があることから、腸内細菌は常に病原体の体内への侵入を防いだり、食べたものを原料にしてからだにとって必須の栄養素を作り出したりし続けてきています。こうした過程の中で腸内細菌がA型抗原やB型抗原を獲得するようになり、それが長い共生期間を経るうち体内で遺伝子移入が起こったと考えられています。

血液型の関与があるにしても、病気は生活習慣の影響が何よりも大きいことは疑いようがありません。血液型の形成にも大きな関わりのあった「腸」。「腸脳相関」、「腸は第2の司令塔」とも言われる大切な腸のケアを含む適切な生活習慣の構築が何よりも大切なようです。