2022/8/31

[56回] アンチエイジング・仔ラム


肉と言えば、よく食卓にのぼるのがステーキや焼肉の牛肉、とんかつや生姜焼きの豚肉、焼き鳥やから揚げ(北海道ではザンギ)の鶏肉。一方、ヘルシーで味わいのある肉として根強い人気があるのが羊肉。永久歯が生えていない、あるいは、生後1年未満の肉はラムと呼ばれ、仔羊のステーキやジンギスカン(ラムだけではなく成長したマトンも)として私たちの食欲を満たしてくれています。羊(未;ひつじ)は十二支の一つであるにもかかわらず昔の人は実際には見たことがなく、明治の初めに北海道での飼育が奨励されジンギスカンとして人々に食されるようになったことから全国に広がり、その存在が認知されるようになりました。
肉は主要なタンパク源である一方で、脂質は飽和脂肪酸であることからネガティブな側面がありますが、そんな中で、羊肉はヘルシーな肉として知られています。しかし、実はヘルシーなだけではなく、アンチエイジング(抗加齢)にまさにピッタリの最強の肉なのです。
本稿では、全国の羊の1/2が飼育されている北海道を代表する食材としての羊肉について、その優れた健康効果をご紹介します。

□カロリー
・他の肉に比べカロリーが低め(同量の牛肉の70-80%)

□脂 質・脂質代謝成分
・羊肉に含まれる脂質は、融点(溶け出す温度)が44~45度と体温よりも高いことから溶けづらく吸収されにくい → その分のカロリーが少なくなる

・およそ40%がオリーブオイルと同じ一価不飽和脂肪酸 → 動脈硬化性疾患や大腸癌などのリスクが相対的に低くなる

・脂肪をエネルギーの生産工場であるミトコンドリアに運ぶL-カルニチンが多い → エネルギー源としての脂質の利用効率が高まるため、体内に余分な脂質が溜まりにくい

□ビタミン・ミネラル
ビタミンB12、B6、B2、亜鉛、セレン、鉄が多い

・ビタミンB12
中枢神経や末梢神経の機能維持や回復に働く、赤血球の健康を保つ

・ビタミンB6
アミノ酸代謝を助ける、有害ミネラルのデトックス、免疫機能の維持、皮膚の健康を保つ

・ビタミンB2
脂質代謝を助ける、皮膚・粘膜・爪・毛髪の健康を保つ

・亜鉛
抗酸化酵素の構成成分、味覚を維持する、免疫力を高める、皮膚の健康を保つ、男性の生殖機能を改善する

・セレン
水銀などの有害物質の解毒、血栓の予防、抗酸化作用、男女の更年期障害
の緩和

・鉄
全身に酸素を運ぶ赤血球の構成成分、脳の神経伝達物質(ドーパミン、アドレナリン、セロトニンなど)の合成を助ける

□アンチエイジング(抗加齢)成分
以前ビタミンB3と言われていた「ナイアシン」が豊富。その一種であるNAM(ニコチナミド)は中間代謝物のNMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)を経てNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)に代謝される。NADは抗加齢/長寿遺伝子の「サーチュイン」を活性化することにより、全身が若々しく元気になる。

一連のナイアシン関連物質の中で、とくにNMNは老化時計の針を逆回転させうるビタミン様物質として世界的な注目を集めており、アンチエイジン
グ医療や美容領域などに広く使われるようになってきている。NMNの点滴やサプリメントは全身の諸機能、諸臓器を元気にするだけでなく、体感が得られやすい。肌や睡眠、目などの改善、体力の増強、知的活動の活性化などがみられることが知られている。

このように、羊肉はカロリーや脂質の吸収効率が低いことからダイエットに適している。また、オリーブオイルと同じオレイン酸が豊富なことに加え、脂肪燃焼を促すL-カルニチンや、心身の健康に重要な役割を演じているにも関わらず多くの人が不足がちなビタミンB群、亜鉛、セレン、鉄が多いことから、まさにヘルシーな食材と言える。さらには、遺伝子のレベルからアンチエイジングに導いてくれるNMNの前駆体「ナイアシン」も豊富に含む羊肉。とくにラムはイエス・キリストの「神の子羊」に通じることから、天から授かった恵みの食材なのではないでしょうか。